ライブトアとフジテレビ もう一つの戦い

microititaro2005-02-25

舞黒一太郎の優雅な電脳日記

   

          目次  http://d.hatena.ne.jp/microititaro/20040911



 ●ライブトアとフジテレビ もう一つの戦い
     新しいメデイアへの移行についての考え方の相違について


  舞黒一太郎です。


 なにかと話題のライブドアの堀江氏だが、放送界が力を入れるデジタル放送にも手厳しい。20日放送のテレビ朝日の番組「サンデープロジェクト」に出演し、「放送局はデジタル化に投資したり、BS放送局をこんなに作りましたが、多分必要ないんですよ。アナログ放送にインターネットつなげば同じことできるんですから」と話した。


 フジテレビジョン日枝久会長は21日朝、「テレビ局は既にネットビジネスはやっているし、デジタルへの切り替えはみんな苦労してやっている。テレビと通信の融合は何年も前から放送界では言っていること」と不快感を隠さなかった。



 地上デジタル放送は2004年から総務省の肝入りで、東京、大阪、名古屋の3大都市圏でがスタート、それを徐々に全国に広げ、2011年1月にはいまのアナログ放送をすべてやめて完全にデジタル化する。


 新しい放送を見るには、最新の対応型テレビかチューナーを買わなければならない。なぜ買い替えを強いてまでデジタル化するのか。総務省はこう説明する。


 地上デジタル放送では高画質のハイビジョンが楽しめる。電話回線などと併用することで、パソコンができない人も双方向の通信が利用できるようになり、家庭のテレビがIT社会の基盤になる。使う電波の周波数はアナログより大幅に減らせるから、空いた分を携帯電話などにまわせる……


 しかし現実に対応テレビは高価であり、経営の苦しい地方局にとってデジタル化の投資は重荷になっている。もっと問題なのは新しいシステムを導入するため、国が今家庭にあるすべてのアナログテレビを使えなくするという強硬手段を取ったことである。


 デジタルテレビには「高精細化」または「多チャンネル化」を目指して開発された。「高精細化」ではNHKがハイビジョン(アナログ)を世界に先駆けて開発した。日本のハイビジョンに脅威を感じたためアメリカ政府はデジタルハイビジョン規格「ATSC」が決めた。郵政省はアナログ方式に限界を感じデジタル化を決断、BSデジタル規格によりハイビジョン放送が始まった。
 また「多チャンネル化」ではディレクTVが衛星テレビをデジタル化によりチャンネル数をケーブルテレビ並みにそろえたため急速に普及した。


 しかしとどまることのないインターネットを中心とする新しい技術の発展は、このデジタルテレビを過去のものとしようとしている。テレビの画像は細い線(走査線)に分解されて送られ、それは標準テレビで525本、ハイビジョンでは1125本ある。そのためハイビジョンがきれいとされているのであるが、今では、5000本級の映像システムも出来上がっている。走査線は増やすほど精細度が増し、5000本になると画面の内外の区別がつかなくなるほど鮮明になる。つまり「高精細化」の点ではハイビジョンは過渡的段階レベルなのである。


 また「多チャンネル化」については、インターネットTVならばケーブルテレビどころではなく、数千、数万レベルの「多チャンネル化」が可能であり、放送コストは百分の一以下にすることが出来る。


 またインターネットTVは電波を使わないので、官による制約の多い電波法に触れることがないためで、現在のTVが使っている電波をすべて、携帯などにまわすことができる。


 また山の多い国土にたくさんの鉄塔を建て、全国でテレビを見られる態勢を作り上げたインフラを、そっくりデジタルに置き換えるのは大変な作業と費用がかかるが、その必要はなくなる。


 また放送局内の新しいデジタルインフラ整備にも多額の費用がかかる。


 デジタルテレビを全ての面で凌駕するインターネットTVの実現は、高速なブロードバンドインフラの整備にかかっている。それさえ実現すれば、どこでもこのメリットを享受することが出来る。それはどこであっても同じハイスピードが保証される光ファイバーが中心となり、そのスピードは現在は100Mであるが、その10倍の1000Mタイプもすでにさまざまの場所で試験運行がなされている。


 国、放送業界あげて取り組んでいるデジタルテレビは過渡的インフラなのだ。デジタルテレビはインターネットTVと違い、電波法の規制はそのまま継続できるため、規制を続けたい官にとっては都合がよいのは事実だ。しかし日本のブロードバンドを促進したADSLが、国産技術のISDNに固執したNTTの抵抗により韓国に遅れをとったことを思い出してほしい。国民が持っている、今のテレビを使えなくしても実現しようとしているデジタルTVの実態は、かくも中途半端なものでしかない。


 よいものであれば必ず需要が出て普及する。いらぬ政府のお節介は百害あって一利無しだ。このたびのライブドアとフジテレビを中心とするフジサンケイグループの争いの裏には,プロ野球新規参入で見せた、読売新聞社主の渡辺氏の表向きの「反対」と同種の問題が存在している。既存利益を守ろうとする勢力が全力をあげ、押し寄せてくる波に強固な砂の砦を築き、抵抗しているように見えるのは私だけだろうか。かりにライブドアという波をかいくぐっても、次々に大波小波はやってくる。