プロ野球 弱小チームの必殺ワザ

microititaro2005-04-20

舞黒一太郎の優雅な電脳日記 103話

   
目次 http://d.hatena.ne.jp/microititaro/20040911



 ●弱小チームの必殺ワザ 労さずして優秀な中継投手を獲得する方法?


舞黒一太郎です。


 プロ野球で弱小チームが強いチームに勝つには、同じ土俵、方法で勝負していては勝てる道理がありません。それには秘策が必要です。今日はその一つの方法をご紹介しましょう。
 

 最近の先発投手のローテーション起用は、中5日とか6日がほとんどですが、昔は連投、中2日起用が日常茶飯事でした。戦前1リーグ時代の、1939年スタルヒン 巨人 68戦 42勝 15敗、1940年 須田博 巨人 55戦 38勝 12敗、1942 野口二郎 大洋 66戦 40勝 17敗、 戦後の1959年 杉浦忠 南海 69戦 38勝 4敗、1961年稲尾和久 西鉄 78戦 42勝 14敗といった大記録がそれを物語っています。


 先発投手がこのよう長い休養日を取るようになったのは、大リーグの投手理論の影響ならびに、肩の消耗による選手生命の短さを極端に危惧する選手、球団の判断が変化したためです。しかし最近のように先発、中継ぎ、ストッパーの分業制が定着してくると、先発投手のローテンションの中5日とか6日ということを金科玉条とするのは大いに問題があります。といいますのはその投手が好投すればなんら問題はないのですが、早い回でピンチを招く場合を見かけることがよくあります。このような場合、中継ぎの力量に自信を持てない首脳陣のそれに対する対処法は常に遅れがちとなり、回復不可能の事態を招きます。例えば広島カープの黒田投手、彼は開幕初戦、巨人戦で見事なピッチングをした、リーグを代表する投手ですが、二戦目の中日戦では早い回につかまり満塁押し出しを連発し、さらに痛打をあびてノックアウトされました。


 もちろんリーグを代表する投手であれ、良いときも悪いときもあるのは当然ですが、中5日とか6日も休みを貰っておいて、そこで体調が悪いというのはプロとして容認できることではありません。その証拠にこの時の黒田投手のスピードは140k後半近くを計時していました。つまり体調ではなく、心理的に調子がイマイチであったと言うべきでしょう。マイナスの心理状態の投手の球には気が入っていませんので痛打、死球、四球を出すことになります。投手がその回の先頭打者に四球を与えるとか、満塁押し出しをするのは、エースであっても、実質三流投手に成り下がっていることを認識すべきです。首脳陣のなすべきことは文句なしに交代なのです。


 しかし投手のコマの少ないチームはそうはいきません。だから引っ張りすぎて傷を大きくしてしまうのです。「エースを出して打たれたらしょうがない」、これは一つの見識と思われているかたが大半でしょうが、それは間違っています。
「エースでも調子の悪いときもある。もちろん体調が悪ければ出さない。しかし体調はよくても心理的体調の悪いなら、早めにあきらめる」これが名将の条件です。


 「しかしその後の中継ぎの力が極端に落ちる場合とか、出してみないとわからない場合はどうするんだ?それならば調子が悪そうとはいえ、実績のある先発を優先するのが無難じゃないか」という声が聞こえてきそうですが、私は「エースでも調子の悪いときもある。もちろん体調が悪ければ出さない。しかし体調はよくても心理的体調の悪いなら、心理的に立て直せばよい。そして立ち直ってから再登板させればよい」と申し上げます。先発投手はすでに中5日も休んでいるのです。なんの働きもさせず、その後また5日も休ませる愚を犯すことはありません。


 その具体的方法とは、高校野球で稀に見られる、投手が一時的に他のポジションを守る選手起用法を使うのです。


 高校野球では選手層が薄く、かつ実戦ではほとんどトーナメント方式であるため、一戦必勝が要求されます。しかしエースと控えでは力の差が大きすぎる場合が多く、エースの調子が悪いといって交代させるわけにはいきません。そこで頭を冷やすため、他のポジションに移動させ、落ち着いてから戻す手法がしばしば使われますが、これをプロでも使います。しかし一戦も休めない高校野球のエースと違い、彼等には中5日の休みがあります。


規則では


投手の交代での注意点



投手交代の際、今まで投手だった選手が他のポジションについた場合、同じイニング中に投手に戻ることは出来ますが、他のポジションにつくことはできません。また、一度投手に戻った場合、同じイニングで、投手以外のポジションにつくことはできません。


 とあります。つまり先発投手が落ち着くまで他のポジションに廻し、別投手を使います。そしてカッカしている頭が冷静になったところで、また投手として戻してやります。彼はもともと力のある選手ですから立ち直る可能性はきわめて大きいのです。立ち直れば試合はがぜん面白くなり、勝機もやってきます。しかしやはりダメということであれば、即交代させればよいわけで、従来の戦略とは戦術がまったく違ったものになります。つまり先発で失敗したエースを、同じ試合で中継ぎに持ってきたことにご注目ください。傷の浅いうちにフォローしてやり、再度冷静になった所で再挑戦させる、これも立派に選手のプライドを立てやる方法の一つです。
 


 この方法を使うには、先発投手候補は他のポジションが出来るよう普段から練習させておく必要があり、希望の多いであろう一塁ポジションなどについては、あらかじめ野手のマルチ対策をとっておく必要があります。
 しかし先発投手はエースで4番という者が多く、野球センスはもともと抜群であり、この一人二ポジションの考え方さえ理解させれば、守備要員としてもう一つのポジションをものにすること自体はさほど困難ではありません。
 

 この方法を使って先発が生き返れば、チームは超優秀な中継ぎ投手が実質的に増えたことになり、彼自身の成績もあがるという一石二鳥の効果が期待できます。