ガソリンより高いコンビニの水

microititaro2005-04-24

舞黒一太郎の優雅な電脳日記 104話

   
目次 http://d.hatena.ne.jp/microititaro/20040911



 ●ガソリンより高いコンビニの水


舞黒一太郎です。


 はじめてイタリアに旅行した時、驚かされたのは生水が飲めず、常にミネラルウオーターを購入する必要があり、その値段もワインと同様であるということでした。水にお金を払うという発想が全くなかった私にとって、それは大きなカルチャーショックでした。日本では硬水と軟水の区別などまったく考えたことがなく、(空気と水はタダ)とばかり思っていたからです。


 しかし日本も変わりました。コンビニで水をペットボトルで販売するとのニュースにも、外国かぶれの商法がどこまで通用するかと、たかをくくっていたのですが、あれよあれよというまに主力商品になっていきました。


 たしかに我々の飲む水道の水はおいしくありませんし、安全性にも疑問があります。しかし誰もこの水の価格のことを問題視する人はいませんが、世界で奪い合いから紛争を起こしている石油から作られる最終商品ガソリンよりはるかに高いことをみなさんは知っておられるでしょうか。
 ガソリンは1リットルあたり120円程度ですが,このうち60%は税金です。油田を開発して,中東からタンカーではるばる運んで,原油をガソリンに精製したものが、リッターあたりたったの50円なのに、ミネラルウォーターはただ(わき水を汲んできただけ)なのに1リッターあたり120円〜250円程度もします。しかしこの10リットルのミネラルウオーター代金、約2000円で、一ヶ月の家族の生活が出来る所が、世界には多く存在しているのです。



 飲み水だけ水道に高性能浄水器を取り付けたものを使うようにすれば、安全な水が1リットルあたり数円で出来ます。このことを知らないのか,知っていても作る気がないか、おいしい水ブランド志向といった理由で、その五十倍以上の値段のものがどんどん売れているのです。お茶についても同様です。


 この水やお茶を購入しているのは一部のお金持ちだけではありません。貧乏といわれる人や、お金を持っていないはずの学生もどんどん買っています。このことはなにを物語っているのでしょうか。


 すべて(手間をかけることを忌む)ことから起こってきています。良い料理の基本は(よい材料、工夫、手間暇を惜しまない)ことですが、最近の日本人はその美徳を失ってしまったようです。




 確かに一般市民の飲む水道水はどんどんまずく、危なくなっています。


 河川の水質汚濁が進み、強度の消毒を余儀なくされていますが、消毒塩素量と比例してトリハロメタンは多くなるという問題が起こります。塩素と水道水に溶け込んでいる有機物が化学反応して、トリハロメタンができます。通常下水処理した処理水を川にもどしますが、その下流で水道水に取り込むと、親水性酸が多くなり、トリハロメタンが発生します。トリハロメタンを飲み続けるとガンになりやすくなるばかりか、発ガン性のみならず、腎臓障害、肝臓障害を誘発します。


 残留農薬も問題です。田んぼ、畑、果樹園、ゴルフ場等から流出し、河川に流れ、水道水の浄水場の取水口から入り、浄水場で除去しきれない農薬が飲料水へ混じっています。農薬の人体健康障害は、手足のしびれ、神経麻痺を多発させます。


 しかし浄水場でも高度浄水処理など、さまざまな工夫がされるようになってきています。東京都の水道局などでは「この夏、冷やして飲もう!!『東京水』」をテーマに、高度浄水処理水をペットボトルに詰めた『東京水』を夏のイベントや施設見学会などでお客に配り、好評を得ています。しかしそれは全体からみればほんの一部でしかありません。


 またいかに浄水場から出される水がよくても、各家庭に配水される水道管鉛管が古くなり、鉛が溶け出して水道水から検出されることもあります。いわゆる鉛管障害で、鉛を飲料水から摂取してしまうと、人体で濃縮され蓄積され、胃腸障害、頭痛、筋肉痛、全身麻痺、神経錯乱等いろいろな障害が出る危険があります。



 私はあるマンションの管理組合の役員をしていましたが、マンションやビルに設けられている貯水槽のずさんな管理には驚かされました。マンションやビルでは水道の水をいったん1階または地下の受水槽にため、ポンプで屋上などの高置水槽に汲み上げ、各戸へ供給します。
 このタンクの中が問題です。中には藻が繁殖し、ゴミだのゴキブリ、蚊、ネズミなどの死骸があることもあり、老朽化した給水管は鉄錆がこびりつき、錆び瘤ができています。タンクにためられた水には汚れがたまっていく一方なのです。


 トイレや洗濯など飲用以外の水はこれでなんら問題はないのでしょうが、保健所の水質検査に合格していても、その現場を見れば、浄水器無しでは、とても飲み水として使う気にはなりません。


※ 現在の水道局では、安全でフレッシュな水道水の供給を図るため、3階までの建物への直結直圧式給水及び4階以上の建物へ直結増圧式給水により直接水が届くよう、配水施設の整備を推進して、直結給水の拡大に努めています。



 健康は自分で守るというのが基本です。となれば飲み水だけは水道水から、鉛、農薬、トリハロメタンが出てきてもそれを除去できるものを使う必要があります。つまり高性能な浄水器は必要不可欠なのです。逆浸透膜浄水器を末端に設置すれば、鉛0.0006ミクロン、農薬0.0008ミクロン、トリハロメタン0.0008ミクロンといったものでも、逆浸透膜で0.0001ミクロンまで除去できるので安全です。

プロ野球 弱小チームの必殺ワザ

microititaro2005-04-20

舞黒一太郎の優雅な電脳日記 103話

   
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 ●弱小チームの必殺ワザ 労さずして優秀な中継投手を獲得する方法?


舞黒一太郎です。


 プロ野球で弱小チームが強いチームに勝つには、同じ土俵、方法で勝負していては勝てる道理がありません。それには秘策が必要です。今日はその一つの方法をご紹介しましょう。
 

 最近の先発投手のローテーション起用は、中5日とか6日がほとんどですが、昔は連投、中2日起用が日常茶飯事でした。戦前1リーグ時代の、1939年スタルヒン 巨人 68戦 42勝 15敗、1940年 須田博 巨人 55戦 38勝 12敗、1942 野口二郎 大洋 66戦 40勝 17敗、 戦後の1959年 杉浦忠 南海 69戦 38勝 4敗、1961年稲尾和久 西鉄 78戦 42勝 14敗といった大記録がそれを物語っています。


 先発投手がこのよう長い休養日を取るようになったのは、大リーグの投手理論の影響ならびに、肩の消耗による選手生命の短さを極端に危惧する選手、球団の判断が変化したためです。しかし最近のように先発、中継ぎ、ストッパーの分業制が定着してくると、先発投手のローテンションの中5日とか6日ということを金科玉条とするのは大いに問題があります。といいますのはその投手が好投すればなんら問題はないのですが、早い回でピンチを招く場合を見かけることがよくあります。このような場合、中継ぎの力量に自信を持てない首脳陣のそれに対する対処法は常に遅れがちとなり、回復不可能の事態を招きます。例えば広島カープの黒田投手、彼は開幕初戦、巨人戦で見事なピッチングをした、リーグを代表する投手ですが、二戦目の中日戦では早い回につかまり満塁押し出しを連発し、さらに痛打をあびてノックアウトされました。


 もちろんリーグを代表する投手であれ、良いときも悪いときもあるのは当然ですが、中5日とか6日も休みを貰っておいて、そこで体調が悪いというのはプロとして容認できることではありません。その証拠にこの時の黒田投手のスピードは140k後半近くを計時していました。つまり体調ではなく、心理的に調子がイマイチであったと言うべきでしょう。マイナスの心理状態の投手の球には気が入っていませんので痛打、死球、四球を出すことになります。投手がその回の先頭打者に四球を与えるとか、満塁押し出しをするのは、エースであっても、実質三流投手に成り下がっていることを認識すべきです。首脳陣のなすべきことは文句なしに交代なのです。


 しかし投手のコマの少ないチームはそうはいきません。だから引っ張りすぎて傷を大きくしてしまうのです。「エースを出して打たれたらしょうがない」、これは一つの見識と思われているかたが大半でしょうが、それは間違っています。
「エースでも調子の悪いときもある。もちろん体調が悪ければ出さない。しかし体調はよくても心理的体調の悪いなら、早めにあきらめる」これが名将の条件です。


 「しかしその後の中継ぎの力が極端に落ちる場合とか、出してみないとわからない場合はどうするんだ?それならば調子が悪そうとはいえ、実績のある先発を優先するのが無難じゃないか」という声が聞こえてきそうですが、私は「エースでも調子の悪いときもある。もちろん体調が悪ければ出さない。しかし体調はよくても心理的体調の悪いなら、心理的に立て直せばよい。そして立ち直ってから再登板させればよい」と申し上げます。先発投手はすでに中5日も休んでいるのです。なんの働きもさせず、その後また5日も休ませる愚を犯すことはありません。


 その具体的方法とは、高校野球で稀に見られる、投手が一時的に他のポジションを守る選手起用法を使うのです。


 高校野球では選手層が薄く、かつ実戦ではほとんどトーナメント方式であるため、一戦必勝が要求されます。しかしエースと控えでは力の差が大きすぎる場合が多く、エースの調子が悪いといって交代させるわけにはいきません。そこで頭を冷やすため、他のポジションに移動させ、落ち着いてから戻す手法がしばしば使われますが、これをプロでも使います。しかし一戦も休めない高校野球のエースと違い、彼等には中5日の休みがあります。


規則では


投手の交代での注意点



投手交代の際、今まで投手だった選手が他のポジションについた場合、同じイニング中に投手に戻ることは出来ますが、他のポジションにつくことはできません。また、一度投手に戻った場合、同じイニングで、投手以外のポジションにつくことはできません。


 とあります。つまり先発投手が落ち着くまで他のポジションに廻し、別投手を使います。そしてカッカしている頭が冷静になったところで、また投手として戻してやります。彼はもともと力のある選手ですから立ち直る可能性はきわめて大きいのです。立ち直れば試合はがぜん面白くなり、勝機もやってきます。しかしやはりダメということであれば、即交代させればよいわけで、従来の戦略とは戦術がまったく違ったものになります。つまり先発で失敗したエースを、同じ試合で中継ぎに持ってきたことにご注目ください。傷の浅いうちにフォローしてやり、再度冷静になった所で再挑戦させる、これも立派に選手のプライドを立てやる方法の一つです。
 


 この方法を使うには、先発投手候補は他のポジションが出来るよう普段から練習させておく必要があり、希望の多いであろう一塁ポジションなどについては、あらかじめ野手のマルチ対策をとっておく必要があります。
 しかし先発投手はエースで4番という者が多く、野球センスはもともと抜群であり、この一人二ポジションの考え方さえ理解させれば、守備要員としてもう一つのポジションをものにすること自体はさほど困難ではありません。
 

 この方法を使って先発が生き返れば、チームは超優秀な中継ぎ投手が実質的に増えたことになり、彼自身の成績もあがるという一石二鳥の効果が期待できます。
 

君の携帯は070じゃないの? 定額携帯電話の登場

microititaro2005-04-15

舞黒一太郎の優雅な電脳日記 102話

   
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 ●定額携帯電話 ウイルコムの挑戦


舞黒一太郎です。


 いよいよ5月1日よりウィルコム(旧エアエッジ 、DDI)から、携帯電話による定額料金(¥2,900)での話し放題が実現します。携帯電話は現代社会においてもはや不可欠となっていますが、唯一の問題は料金の馬鹿高さです。ウイルコムが5月1日より、このタブーに果敢に挑戦します。


 ウイルコムはPHSを利用した内線システムを法人向けに提供していましたが、「音声定額プランを導入することにより、社内も外線で通話できる準備ができた。いわゆる『モバイルセントレックス』よりも、一歩進んだサービスを提供できる」とし、このたびの新プラン発表にこぎつけました。


 ウィルコムは旧DDIであり、日本独自の技術であるPHSで人口カバー率95%のインフラを構築した会社です。機能的には卓越した特長をもったPHSでしたが、電波行政のまずさから、スタートから不利なハンデイを抱えさせられた不幸なシステムであったといえるでしょう。これはパソコンのOS、トロンのたどった道を想起させます。しかしDDIは地道にこのインフラ整備事業を行い、2006年には人口カバー率は99%(ほとんど漏れのない状態)になるところまでこぎつけました。


 今の携帯電話は通話のみならず、携帯コンテンツ、着メロ、TV、TV電話、FMラジオ受信、音楽鑑賞、録音メモ、デジカメ、メール、決済機能など多方面にわたる付加機能を併せ持つ、マルチツールに変貌してきています。しかしこのたびのウイルコム対応機種は先祖がえりではないのでしょうが、これらのマルチ機能はごく貧弱なものです。(もっともこららの付加機能はメーカー側の意思があればすぐにでも付け加えることが出来るものです、、)ターゲットは「音声定額」と「インターネット定額」に絞られています。


 小学生から大学生までの学生の携帯の使用は半端ではありません。コスト意識のない彼らの携帯使用料金は、子に甘い親を大いに悩ませています。そんな親にとってこのウイルコムの新プランは実にありがたいことなのですが、それに水をさす、メトカーフの法則なるものが存在します。


 「メトカーフの法則」とはBob Metcalfe氏が1995年に提唱したもので、「ネットワークの価値はノード数の二乗に比例する」というものです。つまりユーザーが携帯キャリアを選択する際、「みんなが多く持っている携帯キャリアが、爆発的に売れる」ということになります。携帯各社が自社の販売比率を、他業種に比べ神経質過ぎると思われるほど気にするのは、この「メトカーフの法則」を頭に置いているからです。


 しかし「携帯でのおしゃべり大好き」の彼らにとって、「メトカーフの法則」には反しますが、「話し放題」、「パケットの料金をまったく考えなくてよい」、「携帯でパソコンと同じことが出来てしまう」、「プロバイダーと契約しなくてもよい」、「画期的に安い定額料金」という、従来とまったく違う新しさ、楽しさ、料金の安さが理解できた時、「メトカーフの法則」の呪縛から開放される可能性はきわめて高いのです。


 業務用では、病院などの院内連絡、ゴルフ場での場内連絡、工場での工場内連絡といった場面でのPHSを使った無料電話は常識になっていますが、ウイルコムの新プランを利用すれば、この到達範囲を日本中に拡げることが可能となります。


 もはや固定電話コストのダウンよりも、携帯電話コストダウンが必要となってきている状況下、このシステムは、配達や、タクシー間連絡、選挙、政党、労組、NPO組織連絡、全国にまたがる営業所連絡、出張連絡、携帯電話による生活用品の発注などにも使えそうで、いずれの通信コストも画期的にダウンします。




 このシステムの特徴を生かすため、ネットのスピードをなぜ最初から4×にしないのかなどの疑問は残りますが、おしゃべり好きの女子高校生あたりから、この「音のきれいな話し放題PHS」ブームに火がつけば、従来このおいしい携帯事業を独占してきた各キャリアもうかうかとしていられないようになります。「携帯番号が070でない人は拒否られる」そんな時を予感しています。もちろん定額となるのは同じウイルコム製品同士に限られるため、スタート時のメリットは限定されますが、2005年5月1日が携帯電話史上における、エポックとなるのは確実です。



ウイルコム http://www.willcom-inc.com/top/index.html
我が子を食うサトゥルヌス”という問題
 http://www.itmedia.co.jp/enterprise/mobile/articles/0503/30/news013.html
京セラ AH-K3001V http://www.kyocera.co.jp/news/2004/0407.html
ウィルコム、音声定額に申し込み殺到
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050415-00000041-zdn_m-sci
端末 http://www.aircity.jp/
 

「くん」の意味するもの

microititaro2005-03-28

舞黒一太郎の優雅な電脳日記 101話

   
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 ●フジテレビとライブドアの戦い  「くん」の意味するもの


舞黒一太郎です。


 フジテレビ対ライブドアの戦いに、フジテレビの筆頭株主に躍り出たソフトバンク・インベストメントの北尾CEOという人物が登場しました。今回の決定はソフトバンク本体と無関係と説明し、フジテレビをライブドアから守る「ホワイトナイト」になるつもりもなく、フジテレビの経営権取得争いに参戦する意図はないと話しています。



 北尾CEOは野村證券出身で、ソフトバンクに引き抜かれた逸材であり、「ライブドアのやり方は、他人の家に土足で上がり込んで『仲良くしようや』と言っており、両社の争いを終結させる“知恵”を持っている」とも言明しています。


 白を黒と平気で述べる彼の言動には別に驚きもしませんが、これからビジネスの対象関係者となるであろう堀江氏のことを、「堀江くん」と、くんずけで呼んでいるのにはいささか驚かされました。かって地裁の判決が出する前、フジテレビの日枝久会長もやはり「堀江くん」と呼んでおりました。



 戦いをする前の相手に対し行う「くん」ずけ、、、、相手を小馬鹿にするテクニックなのか、完全に相手を見下しているかどちらかですが、いずれにせよ自信満々の表れです。しかしそれは、戦術的にはきわめて幼稚、不用意であり、まだまだの人物のように私には思えるのです。 

話和菊三 聞く地蔵になった男

microititaro2005-03-24

舞黒一太郎の優雅な電脳日記 100話

   
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 ●話和菊三 聞く地蔵になった男


舞黒一太郎です。


昔のう、招福亭菊三とういう落語家がおったげな。菊三は貧乏農家の伜で、江戸の醤油問屋に丁稚をしていたのじゃが、師匠の招福亭於福がたまたまその問屋に訪れた際、表情変化の面白さを気に入り、内弟子になさりんさったんじゃと。


 しかし菊三、百面相は得意じゃが、肝心の落語話がなかなか覚えられず、いつになっても高座には出られんかった。そんなわけで一門の下働きの役に甘んじておった。


 あるとき師匠の於福について、ご贔屓衆の旦那の酒宴に行った時のことじゃ。師匠が急に気分が悪くなり、師匠は後のことを菊三に託し帰宅したんじゃと。菊三はすっり困り果てたんじゃが、やむなく旦那の席に向かった。


 旦那の前でつたない落語を始めたんじゃが、旦那は面白うないらしく、こっちを見ようともせん。そればかりか手を目にそっと当てているのじゃった。菊三は悲しくなり、思わず涙があふれてきた。「旦那、、、」


 菊三は「旦那、つまらない、つたない芸で申し訳けありません」と言おうとしたのじゃったが、旦那は「お前さん、私の気持ちがわかるのかえ。師匠がいないので白状するが、実は今日の私の気持ちは酒どころではない。」と切り出した。


 聞けば嫁ぎ先で子供が出来ず離縁されてきた娘と、一悶着あったそうなのじゃ。娘がよっぽど不憫で可愛いのじゃろうと菊三は思った。「旦那、娘さんがご不憫なんでしょうね」と相づちを打つと、旦那は堰を切ったように娘の話をはじめだした。その間菊三は得意の百面相を駆使し、せいいっぱい旦那の話を聞いてあげた。


 半時もたってすっかり話し終えた旦那は「菊三さん。わしはあんたにわしの悩みを洗いざらい聞いてもろうて、すっかり気が晴れた。ありがとう。それに比べあんたはしょもない他人の不幸話を聞かされ、さぞご迷惑じゃったじゃろう。しかしこの話、誰にも他言無用じゃ。もし他言するようなことがあるのなら、招福亭とはこれっきりじゃ。」と言う。菊三はあわてて頭を振り、他言無用を約束した。


 招福亭にこの旦那からお座敷がかるたびに、菊三が指名されるようになった。そればかりか他のお座敷からも菊三の指名があいつぐようになった。それはすべて愚痴の聞き役として、口の堅さ、自分の話を心から聞いてくれる菊三の真剣さが評判になったからじゃった。


 師匠の招福亭於福はじめ、一門の者は不思議に思った。「なぜ菊三のような半端者に多くのお座敷がかかるのか」と。そしてついに師匠の於福はその理由を問いつめ、「正直に言わないと破門する」とまで言った。じゃが菊三は招福亭に残るよりも、去ることを選んだ。


 菊三はお座敷を廻っている間、「人は皆、多くの他人に言えない苦しみを抱えており、自分のようなつまらない半端者でも、その話を誠心誠意、一生懸命聞いてあげさえすれば、人は喜んでくれる」ということをはじめて知った。いつしかそれが自分の喜びになっておったのじゃった。


 その後菊三は、死ぬまで金持ち貧乏人は問わず、多くの人の話を聞いて歩いたそうじゃ。その後の一生は、金とは縁がなかったようじゃがが、多くの人に慕われた。やがて世間の人は菊三のことを「話和菊三」と呼ぶようになり、いつしかこの二股土手の途中に「聞く(菊三)地蔵」が作られたそうな。


 「聞く地蔵」には今でも多くの(誰にも言えない苦しさを話したい)人が訪れており、線香の香りが途切れることがないんじゃと。

駆動時間24時間のノート誕生か? 流出する未来技術

microititaro2005-03-22

舞黒一太郎の優雅な電脳日記

   
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 ●駆動時間24時間のノート誕生か? 流出する未来技術


舞黒一太郎です。


 最近のノートPCにはCentrinoモバイル,テクノロジ(CMT)を採用しているものが多くなり,その駆動時間が従来では考えられない5時間程度持つものも珍しくなくありません。最高では9時間を標榜する製品も現れました。これなら車や,飛行機、新幹線の中でもDVD、TV、音楽鑑賞、メール、仕事が出来ることになり、ノート本来の、移動性のメリットを最大限生かすことが可能となります。


 この長時間駆動に貢献しているのは高性能モバイルCPUのおかげですが,電池そのものを改良し、大きさは今のものより小さいのに、寿命を2倍以上という、画期的技術をめざすベンチャー企業が現れました。この技術を進化させれば駆動時間が24時間(1日)以上のノートPCも可能です。


 その企業は滋賀のベンチャー、パイオニクス(滋賀県大津市)、佐田勉社長であり、「究極の2次電池実用化のメドがついた」からなのです。同社が開発しているのは、電解質にゲル状のポリマーを使うリチウムポリマー電池です。それは携帯電話やノートパソコンに使われるリチウムイオン電池と比べ、電解質が液状でないので堅牢なパッケージにする必要がなく、軽量化、薄型化に適していたのですが、いかんせん駆動時間に問題がありました。


 パイオニクスは、電極材料を見直し、電解質を紙おむつに吸わせるような仕組みにして,既にリチウムイオンの1.5倍の持続時間を達成し、これにさらに改良を加えることにより2倍以上のものにするとしています。


 ところがこの無名のベンチャーの開発した国産技術に、米インテルがいち早く目を付け、昨年9月3日、同社に出資すると発表したのです。210万ドル(約2億5200万円)を提供し、同時に技術協力契約も結びました。


 インテルはこの技術を独占することにより、自社CPUとの併用で、1日中使えるノートパソコンを目指していると思われます。

 佐田社長は2002年の秋に試作品を手にベンチャーキャピタルを次々に訪ねたそうですが、まったく相手にされず、苛立ち始めた頃、噂を聞いたインテルの投資部門、インテルキャピタルから接触があったそうです。


 この話は今をときめく京都の日本電産が、町工場の試作品超小型モーターを世界のIBMに送り、採用されたことから大成功した話とよく似ています。日本では、すぐ社格、社歴うんぬんを言い、なかなか聞く耳を持ちませんが、海外企業の場合、むしろ積極的に話を聞かしてもらうと言う点が全く違います。


 日本にとって一番大切な「技術」を理解し、支援出来る、政治家、役人、金融人、企業人を育成することが急務です。前に述べたITインフラのDDIを外資に持って行かれたような愚を繰り返してはなりません。

「ぼけ」よ さらば  アルツハイマー治療に光

microititaro2005-03-21

舞黒一太郎の優雅な電脳日記

   
目次 http://d.hatena.ne.jp/microititaro/20040911



 ●「ぼけ」よ さらば!  アルツハイマー治療に光


舞黒一太郎です。


 老人にとって、もっとも嫌な病気がアルツハイマー(ぼけ)でしょう。しかしこの病にかかっている人は意外に多く、私の周りにも片手以上はおられます。かかってしまうと程度の差はあれ、症状はどんどん進んでいき、発病はえらい人、立派な人であろうと関係ありません。


 この病気の原因は特定されておらず、したがって予防法も確立しておりません。したがって手探り状態での治療がなされているわけですが、このたび日本の理化学研究所脳科学総合研究センター(埼玉県和光市)のチームがマウスを使った実験で、原因解明を試み、その結果を20日付の米医学誌ネイチャーメディシン電子版に発表しました。


 このアルツハイマー病の発症や進行を遅らせる酵素名は「ネプリライシン」。アルツハイマー病の原因物質ベータアミロイドを分解、脳での蓄積を防ぐ働きがあります。チームは神経伝達物質の一種、ソマトスタチンを持たないマウスの脳ではネプリライシンの活性が下がり、ベータアミロイドが1.5倍に増えることを発見。活性の鍵をソマトスタチンが握っていることを解明しました。


 ソマトスタチンは既存の化学物質であり、アルツハイマー病の発症や進行を遅らせる酵素「ネプリライシン」を活性化できる可能性のあることが分かったことになり、予防法開発に大いなる展望が開けます。


 ソマトスタチンは、日本チバガイギー株式会社の医薬部門とサンド薬品株式会社の統合によって1997年4月に誕生した、ノバルティスファーマ株式会社で製造されています。
 その効能効果は、末端肥大症・下垂体性巨人症、消化管ホルモン産生腫瘍であり、糖尿病のインシュリン注射と同様、医者の承認が必要ながら、自己注射が可能であり、保険適応が認められている商品です。したがって商品化そのものには時間がかからないため、新しいアルツハイマー治療薬の登場は、意外に早いと思われます。

※(投資されている方、ノバルティスファーマの株に注目)



 これは久しぶりの日本発のよい話であると思い、ご紹介いたしました。