働かざる者が喰いすぎです

舞黒一太郎の優雅な電脳日記

   
目次 http://d.hatena.ne.jp/microititaro/20040911



 

 舞黒一太郎です。


 「働かざる者喰うべからず」・・・この言葉は誰しも知っていますが、歴史上
それが実現した例はありません。この初めにこの言葉を使ったのは、ソビエト
会主義共和国連邦の創始者であるレーニンとされていますが、事実はそうではあ
りません。これは実は、聖書のなかの言葉であるのです。新約聖書「テサロニケ
人への第二の手紙」に、怠け者を厳しく戒めた文章がそれにあたります。


 またB.C.390〜B.C.470年頃の中国の諸子百家墨子も、 兼愛交利
(血縁によらない無差別の愛、相互扶助)と、礼楽を無用の消費として排斥、非
戦、節倹勤労(働かざる者食うべからず)を提唱しています。


 要は大地主や財閥など自らは働くことなく勤労者を搾取し、その富で贅沢に暮
らす支配階級、闇取引で大儲けしている悪徳商人、勤労を嫌う怠け者などを批判
し、労働者階級の闘争意欲を鼓舞するために、この言葉は使われたのです。


 この格言は後にスターリン、そして中国の毛沢東カンボジアポルポト等も
よく口にしており、「労働は自由をもたらす」と言っていたナチスドイツのアド
ルフヒトラーもその1人です。


 江戸時代、人口7%の武士は、300年も平和な時代が続いたため、領民を守
るという存在意味を失っておりいました。それにもかかわらず自分たちの特権、
生活を維持するため、非常時同様、農民の生産した年貢米の4割から7割を徴収
しました。その精神は家康の言どおり、「農民は生かさぬよう、殺さぬよう」で
あり、まさにやらず、ぶったくりの過酷なものでありました。
 武士は自分たちの生活を守るため、本来外敵に向けるべきエネルギーを、哀れ
な農民をさらに搾り取ることに集中したのでした。


 驚くことに、この江戸時代、つまりレーニンよりはるか前に、我が国に「働か
ざる者食うべからず」を提唱した学者がいました。それは秋田藩、安藤昌益です。
彼はそればかりでなく、武家社会の思想的支柱である、仏教、儒教といった既存
の精神世界を批判し、身分制度、差別の否定などを提唱しています。(この異端
学者、安藤昌益については別の機会にふれることにいたします。)


 このように外に向けるべき軍事力を、自らの権益維持のため自国民へ向け振り
廻し、国民が飢えに苦しむ状態になっている場合は、こんな政府、行政はまさに
害虫であり、不要でしかありません。


 わが国は、戦後の国民総働き蜂、勤勉さの結果、贅沢な生活を得ることが出来
るようになりましたが、戦後60年もの無戦争状態から平和ボケし、その結果、
徐々に勤勉さを失い、経済力が落ちていくというスパイラルに陥りました。つま
り国民は「働かなくなった」のです。そうなると収入は下がっていきますが、い
っぺん覚えた贅沢はなかなか振り切ることは出来ずに、(収入減、支出は減らな
い)という典型的な(滅びのパターン)に入っていきます。


 こういった状態になると税収は減りますが、行政の給与は下がりません。それ
で事業費がどんどん減ることにのなります。そのギャップは借金である国債の増
額でまかなってきましたが、この借金の利子が人件費を上回るようになり、収入
の半分以上が後ろ向き費用に使われるようになってしまいました。通常の家なら
ば夜逃げしか方法はありませんが、国の場合は国債という金のなる木をさらにじ
ゃぶじゃぶ使い、庶民からの増税で当面はしのげます。したがって目先のごまか
しはしても、将来のことは考えたくもないのが現実ですが、内実はもう、金利
1%上がっても国家財政に大きくひびくほど、脆弱な体質になっています。


 このように行政、エリート国民が働かなくなってくると、庶民からの搾取はき
つくなるのは当然です。こうなると長期不況、社会保障の先細り、極端な拝金主
義の横行、モラル低下、国内情勢不安が起こり、その行く先はハイパーインフレ
後、預金封鎖、国家破産の道をたどるか、昔のように新たな侵略地を捜し、軍事
あるいは経済戦争を引き起こすかしか方法はありません。


 これを防ぐ特効薬はないのです。その処方箋は「働かざる者喰うべからず」の
原則を思い出し、「貧しからずを憂えず、等しからずを憂う」行政指導、また「
生き、暮らしてゆける生業の開発、拡大」、目的を達し不要になった事業の廃止、
国民から搾取しない、国民の行う民業を妨げない、国民のために働く小さな政府、
そして十善戒などのような簡素で、わかりやすく、暖かいモラル、お金のかから
ない教育の確立、社会的弱者へのいたわり、弱きを助け、強きをくじく正義感、
掟破りをする者には厳しい罰の適用といった、地道で堅実な方法があるだけです。