少子化対策が年金対策そのもの

舞黒一太郎の優雅な電脳日記

   
目次 http://d.hatena.ne.jp/microititaro/20040911



 舞黒一太郎です。



 日本の年金は野口悠紀雄氏が指摘しているように、最初からシステム的なミス
があることと、急速な少子化により、制度そのものが崩壊しつつあります。しか
し国民のことさえ考えねば、増税による徴収額の増加、支給開始年齢を遅くする、
支払額を少なくする、という悪の三位一体の政策を繰り返すことにより、今の制
度を維持することはできるので、どうもその方向に進みつつあるようです。


 今の老人は、(団塊の世代)を中心とする多くのサポート人口と、年金の先食
いにより、とても豊かです。先行きのことはわからないけれど、今の年金は頼れ
るものなのです。政府の好況という宣伝とはうらはらに、地方の景気はさらに悪
化しているように見えますが、その中で唯一目立つのは、これらの豊かな老人達
の生き生きとした姿です。


 一昔前の社会では、子どもを持って初めて一人前と見なされ、立場の弱い嫁は、
子どもを持つことによって嫁ぎ先での居場所が見つかったという面がありました。
そして子を養い、その代償により老後は子供から面倒を見てもらうということが
当然化されており、年金制度がなくても、なんら問題はなかったのです。


 しかし年金制度が完備するならば、自分の老後は自分で支えることになり、老
後に子供の援助が無くとも生きていけることになります。となれば今のように一
人1500万円もかかる子供はまさに金食い虫であり、つらくてわずらわしいこ
ともある出産・育児を、就学を好んでする理由はなにもないことに気づきます。


 苦しいばかりの生活で楽しみはセックスだけ、また避妊方法を知らないため子
供が出来る、いわゆる貧乏人の子だくさんという時代は去りました。セックスの
楽しみと、その結果である子作りとは無関係になっているのです。結婚しなくと
もセックスは自由に楽しめる時代になりました。
 老後を見てもらう必要がなく、持ち家を持つという目標がないなら、子育て以
外の生きがいや楽しみは数多く存在します。育児に専念している人が時として肩
身の狭い思いをし、自分の意思で子どもを持たずに自分の生活を楽しんでいる人
たちを横目で見ながら、子どもの
かわいさだけを心の支えにするしかない、ということはまったくありません。


 また子供を持たないと一人前の家族と認知されなかった時代は完全に去りまし
た。自分だけの人生を考えるなら、ますます子育ての必要性はなく、それで浮い
たお金で心身の贅沢が出来ることになります。子供を産まないということで、今
まで受けた不利益を、なんら咎められることなく拒否できるようになっています。
逆に子供を持つ親が、持たない人に比べ負担感、身軽さへの妬みをもつことから
幼児虐待などを引き起こすといった原因の一つも、ここにあるように思います。

 
 しかしこの年金制度が破綻するなら、この大前提は崩れます。老後はまた子供
に見てもらわなくてはならなくなるのです。しかし今の子供に、世話になってな
い老人を看る義務も、責任もありません。自分の生活で手一杯のはずです。


 年金制度破綻が現実のものとなりつつある今、本気で少子化対策に取り組む必
要があるのです。子育てを中心に生きている人が収入が少なくなり、一人で疲労
困ぱいし、子育てが経済的に個人の家庭にだけ負担をもたらす現代の税制や子育
て手当、教育のあり方は、根本的に間違っています。子育てを拒否している人と
の不公平感をなくすることが必要です。


 そんな中注目されるのは、民主党の出している「子育て法案」です。年金騒動
の陰でまったくスポットをあびておりませんが、子供一人につき月額4万円を援
助するというものです。子供を育てた事のある人なら誰でもこの有り難さはわか
ります。三人子供がいれば、月額12万円の子育て資金」がもらえるのです。夢
を与える、これならなんとか子供が育てられる、これが政治のやる仕事なのです。