あたりまえじゃ面白くない。小が大に勝つ秘法

舞黒一太郎の優雅な電脳日記

   
目次 http://d.hatena.ne.jp/microititaro/20040911



 


 舞黒一太郎です。


 NHKの「プロジェクトX」で、東京オリンピックで初めて採用された柔道で
銀メダルを取った神永選手と、それから12年後、彼の為し得なかった金メダル
を獲得した愛弟子、上村選手の物語が放映されました。


 神永選手は靭帯を切断しており、とても出場できる状態ではなかったのですが、
それを隠して決勝まで進出、決勝であの2mの巨漢、ヘーシンクに押さえ込まれ、
なすすべも無いまま破れてしまいます。ブーイングの嵐の中、しかし彼は自分の
ケガの状況を一切説明することなく、静かに去ってゆきました。


 国技である柔道が開催国の特権で初めて採用され、そして誰しもその勝利を信
じていた神永が敗れ去ったという屈辱は、ながく日本国民のトゲとして突きささ
ったままとなります。「柔よく豪を制す」の柔道の精神は「力」、「大男」の前
に影の薄いものになり、柔道は欧州中心のヘーシンク、ルスカといったパワー柔
道に変わってゆきました。


 しかし神永は三船十段の「柔よく豪を制す」を知る、真の柔道家でした。大男
全盛の中、自らの思想を体現できると見込んだ、体の小さい上村に、自分の全て
を教え込みました。その結果、12年後、上村は見事悲願の金メダルを取ること
に成功します。


 神永、上村の成功例のみならず、古代からの日本の武芸達人のいう勝負で勝つ
要諦はつぎのとおりです。


1、いかに相手にパワーがあろうと、そのスタートを封じればパワーの出しよう
  が無い。最大効果点での力を10とするなら、その十分の一、または百分の
  一1の力で封ずることが出来る。しかし相手の精神疲労度は反比例する。


2、自らを石にしていまうという技術。これをマスターするとどんな力持ちでも
  小男、女性といえども動かすことが出来なくなる。


3、無駄な力を全て抜き、力学のポイントに力を加えれば、小さな力で大きな作
  用が可能となる。(気を込める)わざのききめに重さが加わる。


4、相手の動き、意図ををスローモーションのように見れるようになる。それが
  可能となれば、相手の思惑と逆の動きを行えばよいだけだ。


5、上記の動きを、瞬時にすべて可能にする集中力、シンクロ力の養成が訓練の
  主体である。わざの修練はいうまでもなくプロなら当然である。